介護を始めるとなると、まず決めなければならないのが、だれが、介護を担うのかということです。
複数の家族が関わる場合は、ケアマネジャーや医療機関などと連絡をとる、キーパーソンを決めることも大切です。
そして、どこで、介護を行うのか、ということを決めなくてはなりません。
また、緊急時の対応も、ある程度決めておいたほうがいいと思います。
介護をするということは時間を譲り合うこと
在宅介護の形をとると決めた場合、理想を言えば、社会資源も使いながら、誰か一人に偏らないように、何人かがローテーションを組み、それぞれが担当の役割を、果たすのがよいのだと思います。
しかし、介護を必要とする方が、誰かの家に同居となったら、やはり、その家庭が中心になっていくことはやむを得ません。
また、住まいが遠方であったり、仕事が忙しかったり、自分の体調がよくなかったり、配偶者の親の介護がすでに始まっていたり、子どもがまだ乳幼児だったり、そもそも、参加する気がなかったり……など、いざ、介護となると、
いろいろな事情が出てくることもあるでしょう。
介護を行うということは、ある意味、時間を譲ることだと思います。
自分や自分の家庭のペースで使っていた時間を、多かれ少なかれ、要介護者の都合に合わせて使う生活になります。
ダブルケアの場合は子どもたちの生活もかわる
家で子どもが帰るのを待っている夕方の時間が、要介護者の夕飯のお世話のため、出かけている時間になることもあります。遊びに出かけたり、習い事の応援に行ったりしていた、土日や祝日の時間が、つきっきりのお世話の時間や、病院や施設の面会の時間になったりします。
ダブルケアの場合は、この、時間の使い方の変更に、少なからず子どもたちへの影響が出ます。
我が家の場合は、はじめ、すぐ近所の義母の家に私が出向いていました。そして、義母は、転倒して大けがをしやすいにも関わらず、一人にすると自分で動いて転んでしまうので、20分と目が離せない状態でした。
だから、義母が退院した日から、子どもの帰宅時に私が家にいることは、ほとんどなくなりましたし、夕食を食べる場所も、義母の家に子どもたちが来て食べるというかたちに変わりました。
しかし、勉強や習い事が忙しくなってくると、夕食のための往復も大変になり、お惣菜の買い置きや、作り置きを用意しておいて、自分で温めて食べもらうようにしました。夫が帰宅し、交代してもらってから私は家に戻りました。
さらに、夫は、義母と同居していた兄弟が帰宅したら交代して帰宅しました。
子どもたちは、それぞれに、宿題や通塾、習い事の練習などしてくれていたので助かりました。
また、文句も言わず、義母宅にいる私に、
「今日の豚汁おいしかったよ!全部食べた!」
などと、電話をかけてくれたりして、子どもながらに、状況と変化を理解し、受け入れようとしてくれていることを感じました。
でも、学校のことや友達のことなど話しながら食べていた食事の時間が、ある日を境に、がらりと変わってしまったことは、時間が経つにつれ、ストレスとなっていったことは否めません。
夫やその兄弟の帰宅が遅くなると、私は義母を一人にして帰れないので、家に戻るのが夜中になることもありました。すると、寝る時間になっても、親のいない状態です。
半年後、こんな往復生活に限界を感じて、義母に、私たちの家に来てもらうことにしました。義弟や義妹が看てくれる時間以外は、うちで過ごしてもらうことにしました。そのために、介護用ベッドやポータブルトイレなどを、うちにも設置してもらいました。
すぐ近所とはいっても、私が義母の家に出向いているあいだは、家にいないことには変わりありません。義母にうちに来てもらうことにして、とにもかくにも、子どもたちと同じ空間にいられる体制となったときは、本当に安心しました。
キーパーソン、主たる介護者、介護をする場所を決める
義母につきっきりの介護が必要になったとき、いわゆる長男の嫁で、住まいがすぐ近所であるということもあり、
「お義姉さんを中心にやってほしい」
という言葉が、親族からありました。
何年も前から、いつかはくると、ある程度予感があったということもありますが、断ろうという気持ちにはなりませんでした。
一人では暮らせなくなり、明日からの生活について困っている義母を目の前にして、その瞬間、主として支えてあげられるだけの条件であったのは、私だけでした。
先に亡くなった義父、そして義母に対して、感謝の念もありましたので、恩返しのときだという気持ちもありました。
それで、
キーパーソンは長男である夫、
主たる介護者は、私、
介護する場所は、義母の自宅と我が家、
という体制に、半年かけてなっていきました。そのほか、ケアマネージャーと相談し、往診、訪問看護、訪問介護、福祉用具のレンタル、デイケア、デイサービスなどの体制をだんだんに整えました。
このとき、いいマネージャーさんに会えていたことが、どれほど助けになったか!
誰が介護を担うのかということは、まず、介護をする気持ちがある人が、何人いるのかということを、確認することから 始めるのがよいと思っています。 そのわけは、次回に書きます。
💡役に立つかもメモ
シリコン製のスプーンは優しい使い心地
食事介助のときのスプーンですが、
金属製のものだと、歯茎や歯に当たると硬くて痛いのではないかと思うことがあります。
また、自力で食べてもらうときにも、
手が動きにくいと、お皿やお椀、鉢型の食器などに、スプーンが沿ってくれるとすくいやすそうです。
何かないかと探していたら、
ありました。
シリコン製のスプーンです。
握っていても滑りにくいし、歯当たりも優しい。食事介助のときも、口の動きに合わせて介助できます。