ダブルケアデイズ

子育ての最中に、介護がやってきた!ひた走る日々。

ダブルケア 子育て、介護、仕事が重なったときの子どもへの対応はどうするのか(乳幼児編)

前回、在宅介護と仕事を継続していくための介護体制の一例を考えてみました。

さて、介護体制を整え、仕事を続けることができる状況になっても、ダブルケアで気になるのは、やはり、子どものことです。

就学前、小・中学校、高校と、それぞれに親のサポートが必要です。時間がままならない中で、確保すべきは、短くてもいいので、子どもとの一対一の時間ではないかと思います。各年齢別に対応の仕方を考えてみたいと思います。

 

 

乳児期は授乳の時間を大切に

子どもが乳児期のあいだは、授乳という大切な役割があります。母乳の場合この供給源は母親だけです。仕事をしながらの育児であれば、母乳をしぼって預けるという工夫をすることもあるでしょうが、母乳をしぼって衛生的に保管するという手間は外せません。

また、夜間の授乳もあります。しかし、ダブルケアになったことを理由に出ている母乳を止めてしまうのは、もったいなすぎます。むしろ、泣いているときすぐにかまってやれないことがあっても、母乳をあげる時間だけは守る方向で、介護の方針を考えることが適切ではないかと思います。

人間は、他の動物と違い、自力で立ち上がることができない状態で生まれてきます。ですから、生まれてから立つまでの1年間は、人間ならではの、特別な保護を必要としている時期なのではないかと思います。

そして、母乳であっても、ミルクであっても、授乳の時間は、赤ちゃんにとって、親との信頼関係を最も感じとれる時間だと思います。

ダブルケアの状況になると、泣いてもすぐに抱っこできないときもあるかもしれません。だからこそ、親子のぬくもりをお互いに確認し、人間形成の基本となる信頼関係を築く時間として、授乳の時間は優先してよいと思います。

ぜひ、携帯電話は置いて、この時間だけは、落ち着いてゆっくり赤ちゃんの目を見て、話しかけながら、授乳してみてください。その時間、赤ちゃんがどしっと落ち着いて飲んでくれたら、だいじょうぶ。

目を見て話しかけるということが、赤ちゃんの心も能力も、大きく育てているはずです。そして、この時間を大切にすることが、子どもの心を安定させ、きっと、その後の育児をとても楽にしてくれると思います。お母さんの母としての自信も育ちますし、お父さんなら、父親である実感が深まるでしょう。

正直なところ、赤ちゃんのいるご家庭での在宅ダブルケアで、しかもお仕事も続けるとなると、よほど、親族の人手がないと、難しいと思います。主たる介護者が別にいて、手伝う立場くらいで精いっぱいではないでしょうか。核家族では、介護者のほうがダウンしてしまう可能性が高いと思います。

この場合は、乳児の育児中であること、仕事もしていることを自治体にしっかり伝えて、特養などの入居順序を早めてもらうのも一つの選択肢だと思います。

 

幼児期は本をかすがいに

どんなに、わんぱくで、いつも飛んだら跳ねたりしている子どもでも、本当は、本が大好きです。むしろ、そのような子どものほうが、本の世界に即座に入り込んでしまうかもしれません。

ダブルケアとなると、忙しくて、本を読んでいる暇などないと思いがちになるかもしれません。でも、あえて、ここで、本を読んであげる時間を作ることは、ダブルケア生活を乗り切る大きな助けになると思います。たとえ短くても、この時間がとれるように、介護体制を作る工夫をするとよいと思います。

子どもを膝に乗せたり、ぴったり寄り添って読んだり、一緒に絵をながめたりするといいですよ。もし、二人以上子どもがいたら、それぞれに、この時間を作ってあげるといいと思います 。たとえば、絵本一冊読むのに、10分くらいでしょうか。あとの余韻を楽しむ時間まではとれないことも多いかもしれませんが、子ども一人一人に、この10分を確保することが、ひいては、仕事を続けたり、ダブルケアを乗りきったりする知恵と力を、親にも子どもに与えることになるでしょう。

優れた絵本は、子どもの心にも大人の心にも豊かさを与えてくれます。実は、私も、子どもたちが幼いころに読んであげた絵本の言葉や絵が、介護をしている中で、何度も、いくつも、浮かんできて、癒されたり気持ちに余裕を取り戻すきっかけになったりする経験をしたのです。

そして、この時間を最大限に生かす大事なコツは、この時間を何かと引き替えにしないことです。

たとえば、子どもが言うことを聞かないことがあっても、「じゃあ、今日は、絵本読まない」とか、「本を読むのなしね」とか、「絵本読むのなしにするよ」と決して言わないことです。反対に、どんなに叱っても、親子関係を立て直す時間として担保しておくことが、この時間の価値を高めます。

背中に親の温もりを感じながら、好きな絵本を読んでもらう時間は、その子にとって、お母さんやお父さんとの一対一の時間です。この時間を持っている子どもは、どんなに叱られても、親を信頼します。親も、子どもの匂いや温かさを実感します。すると、不思議なもので、親の心も落ち着き、安心して子育てができます。

また、本から得る想像力や豊かな言葉は、いずれ訪れる思春期のイライラを言葉に表すことができる語彙を与え、子どもの自分探しを支える力となるでしょう。

同じ本を読んでほしいと言うなら、それを何度でも読んであげればいいのです。子どもは、読んでもらうたびに新しい面白さを感じているのでしょう。私も、それぞれの子ども三人三様に何度も読んだ本があります。特に末っ子は、孫悟空が好きで、何か月にもわたって繰り返し読んだ思い出があります。そして、本人にも、しっかりその記憶は残っています。

一対一の、信頼を確認する時間が大切にされていれば、子どもは自分を信じて、いつの間にか自力で伸びていく力を身につけていくと思います。

 

完全を求めないで

ダブルケアをしていると、とにかく、気持ちが忙しいです。育児も介護も仕事もすべてが中途半端になっている気がして、忙しいわりには、達成感がなく、不完全燃焼の感じがあります。

でも、人一人のキャパシティには限界があるのです。育児にも仕事にも介護にも前向きに取り組み、考えたり行動したりしていること、それだけでも、「がんばってるね」と十分に評価されていいことだと思います。。

介護は、一人や一家族だけで抱え込まないことが原則です。社会資源の力を借りてできることは、借りましょう。というより、社会資源として用意されている、在宅介護支援のための施設や医療介護スタッフとチームを組んで要介護者を支えるのが理想です。そして、家族にしかできないことに、力と時間を残しましょう。

要介護者と介護者家族とが 、互いに、時間や気持ちを譲り合い、「いいあんばい」を探していく工夫をしましょう。犠牲になるのではなく、なんとかいい道を探そうとしているそんな大人の姿からは、小さい子どもだって、ちゃんと大事なことを学んでますよ

 

一緒に生きている感じが、だんだんに育っていくといいなあ。

 

次回は、小学生以降の子どものことを考えてみます。

 

 

 

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