今回は、仕事が続けられるような介護体制を具体的に考えてみようと思います。
仕事といっても、フルタイム、パート・アルバイト、通勤、自営などいろいろなスタイルがあります。すべてのパターンについて書くことはできないと思いますが、できるだけ多くのパターンに応用できそうなパターンで考えてみようと思います。
また、介護のいろいろな方法や要素のなかでも、今回は、在宅介護で介護者が留守のあいだをどうつなぐのかということを中心に考えます。
介護者全員が朝7時に出かけて夜8時に帰宅するパターン
介護状況例
同居、食事、着替えの介助、見守りが必要
家族例
父母、中学生一人、小学生高学年一人
介護プラン例1
訪問介護ヘルパー、デイサービス、ショートステイ、福祉用具レンタル
介護費用概算
月額15万円から20万円くらい(医療費は含まない)
介護者全員がフルタイム勤務のパターンは、ダブルケアの家庭では少ないかもしれません。しかし、施設入居を考えても、すぐに条件に合うところに入居可能かどうかはわかりません。一時的にせよ、在宅介護になることは十分考えられます。働きながら介護をする場合の基本形として、まず、考えてみたいと思います。
6:00
朝、特別に変わったことがないか声を
かけるなどして要介護者の様子を確認
トイレ介助、おむつ交換など、必要な対
応をする
デイサービスの連絡ノート記入
7:00から8:00
夫婦、子どもたちがそれぞれ出勤、登校
8:00
訪問介護ヘルパーに来てもらう
(鍵の扱いなどはきちんと打ち合わせをし
ておく。キーボックスも便利)
朝の着替え、洗面、朝 食、口腔ケア、
デイサービスへの送りだしをしてもら
う。
9:00から17:00
デイサービスで過ごしてもらう
夕飯まで出してくれるデイサービスなら
頼む日もあり
17:00(または、夕食後なら18:30ごろ)
帰宅にあわせ、訪問介護ヘルパーにきて
もらう。迎え入れをしてもらい、着替え
後、夕食、洗面、口腔ケアをすませ、
ベッドに寝かしておいてもらう
20:00
夫婦帰宅 デイサービスからの連絡ノー
トと要介護者の様子確認
家族食事
21:00以降
翌日のデイサービスの準備
その他必要に応じて対応
介護プラン例2
小規模多機能型居宅介護の利用、福祉用具レンタル
介護費用概算
月額15万円から20万円くらい(医療費は含まない)
利用例(3食+訪問介護+週3回デイサービス+ショートステイ2泊3日×4回)
小規模多機能型居宅介護は、地域密着型の、介護プランです。
訪問介護、デイサービス、ショートステイのサービスを在宅介護を中心に、一つの施設、同じスタッフで、臨機応変に組み合わせていくものです。上記の介護プラン1のメニューを一か所で対応するイメージです。
このプランを利用すると、他の訪問介護ステーションやデイケア、デイサービスなどは使えません。そのため、小規模多機能型居宅介護サービスを利用すると決めた時点で、それまでつながりのあったケアマネージャーや、スタッフとのつながりはとぎれてしまいます。
しかし、一か所の小規模多機能型居宅介護施設との連絡で、急な仕事の都合の変更などにも、比較的、対応してもらいやすいというメリットがあります。たとえば、デイサービスの利用のみで頼んでいた日でも、急に、仕事で予定通りの帰宅が難しくなった場合、施設側の対応が可能であれば、夕食まで食べさせてもらい、家まで送って着替えなどしてベッドに寝かせておいてもらうといったことが頼めるのです。まさに、第2の家庭のような感覚でお世話になれる可能性があります。
ただ、一か所ですべてのプランを網羅すると、その施設のサービスやスタッフとうまくなじむことができればよいのですが、あまり合わないときは、気分転換がはかりにくく、つらいこともあるかもしれません。また、デイケアなど、専門的なリハビリや取り入れてみたいサービスがあっても、取り入れにくくなります。
費用は、介護保険部分は約3万円と一定額なのですが、食事や宿泊費は別なので、食事や宿泊の回数で大きく個人差が出ます。
その他
- できるだけ規則的に、毎週、または隔週でショートステイを利用し、子どもとの時間や休息のための時間をつくる。
- 介護プラン例1の場合、急な出張は、可能であればショートステイ先に予定変更や追加をお願いするか、お泊まりのできるデイサービスであれば申し込む。
- 繁忙期で、連日残業などがある場合は、いつものショートステイ先に、その期間だけロングステイを申し込む。
- 親族でほかにも介護に参加できる人がいるなら、可能な連携をする。たとえば、おむつなど、介護に必要なものの買い出しや、作りおきのできるおかずをつくる、通院の付き添いを引き受ける、介護者家族の子どものサポートをするなど、直接要介護者に関わることばかりでなく、介護者家族を支えることであってもいい。
- 介護費用の負担は、まずは、要介護者本人の資金から出すことを基本とし、不足分は、親族で分担する。
- 要介護者の体調不良や定期的な通院、往診日などは、介護休暇や年休を利用する。
要介護者一人一人、介護者家族一人一人、おかれている状況は違います。
でも、どうすればうまくいくかと考えると、社会には、今あげた少ない介護例のほかにも、地域や制度の中に意外といろいろな器が用意されていたりします。アンテナを立てて、多くの情報を集め、要介護者にも、介護者にもよいプランが実現できるといいですね。