ダブルケアデイズ

子育ての最中に、介護がやってきた!ひた走る日々。

ダブルケア 子育て、仕事、介護の同時進行になったら

育児(乳幼児)、子育て(学齢以降)と家事、仕事との両立がすでに、大きなテーマとなることですが、ここに、介護が入った場合、どうすればいいのでしょうか。事態も気持ちも、混乱するのは当然です。

てすが、ここは、ひとつ冷静になって考える必要があると思います。

 

 

仕事をやめる前にまず体制を作る

育児・子育てと家事、仕事、そして介護は、一つ一つがかなりのエネルギーを要するものです。家庭と仕事の両立だけでもいっぱいのことろに介護が入ると、何をどうすればよいのか、どこから手をつけたらよいのかもわからず、混乱することが多いと思います。

基本的には、仕事は辞めないほうがいいと思います。ましてや、状況も気持ちも混乱しているあいだに仕事を辞めてしまうことは、極力避けたほうがいいと思います。なぜなら、介護は、始まった当初がいちばんたいへんだからです。

いろいろな社会資源を利用し、家族や介護の依頼先との連絡体制を整えて、介護体制をつくっていく何ヶ月かのうちに、右も左もわからない混乱状態からは抜け出すことができます。

仕事を続けながら、介護をするためにはどうすればよいかという方向で、まずは体制を整えていくことが大事です。それでも難しいと感じる場合も、もちろんあります。

しかし、少しずつ世の中が高齢者社会を自覚しはじめていますから、職場となんらかの交渉ができるかもしれません。早々にあきらめず、できる限り仕事が続けられる方法を探るべきだと思います。

まず確認することは、

  1. 介護に携わる意思のある人が何人いるか
  2. 在宅介護をするのか、施設入所を考えるのか、または、入院期間がどれくらいか
  3. 介護に使えるお金がどれくらいあるのか
  4. 施設入所を考える場合、実際に入所できるまで、どれくらいの期間が見込まれるのか
  5. 在宅介護をする場合、要介護者ご本人の家も含め、誰の家で行うのか

といったことです。

親族で集まり、これらのことが整理できると、自ずと、自分が介護にどのような関わり方をするのか、また、しなければならない状況なのかが見えてきます。

主たる介護者として、要介護者の自宅に通ったり、一緒に暮らしたりする関わり方もあります。また、ローテーションを組んで、週の何日かを引き受ける場合もあるでしょう。

あるいは、主たる介護を兄弟姉妹家族が引き受けてくれたため、介護費用を出すというケースもあるでしょう。

ときには、要介護者や主たる介護者を支えるため、食事を作って届けたり、掃除洗濯だけをしたり、といった関わり方もあると思います。

自分がどのような関わり方をするのか、せざるを得ないのかで、仕事との調整の仕方も、変わってきます。ここを見きわめ、仕事のスタイルを考え、できる限り仕事は続けるべきです。

 

親の年金や収入があるから仕事を辞めてもいいと考えない

誰の介護をするのかということはそれぞれですが、ダブルケアの場合は、親の介護が多いと思います。すると、親の介護を理由に、仕事を辞めてしまうケースとして、親に年金や収入があるから、介護と引き替えに、それで不足を補えばいいと考えることもあるかもしれません。

これは、ダブルケアに限らず、介護離職のパターンとして多いと思います。

しかし、この考えは、穏当ではないと私は考えています。

その理由は、

  1. 介護そのものにかけられるお金が減る。
  2. 介護に必要な、社会資源の利用にかけられるお金が減ることで、介護者の負担が増える。
  3. 介護者の負担が大きくなりすぎると、介護者の心身の健康を保つことが難しくなり、要介護者にとってもよくない状況になりやすい。
  4. 要介護者が亡くなったあと、年金などの収入がなくなり、残る現金、不動産なども直ちに相続財産となるため、介護者に残される保障はない
  5. 最悪の場合、親族から、お金を使い込んだと思われ、厳しい要求を突きつけられることもある
  6. 介護をしたということが、遺産相続の際に考慮されるとは限らない

このようなことから、要介護者のお金は要介護者の生活や介護のために使うということを、徹底するほうがよいのです。そして、介護者は、社会資源をフルに利用して、仕事を続けられる状況をなんとか残すほうがいいと思います。

ひいては、それが、長く続くかもしれない介護を乗り切る基礎力となっていくはずです。

 

仕事を続けることのメリット

学費を確保しやすい

ダブルケアの場合、子どもたちにも費用がかかる時期であることが多いと思います。

たとえば、部活動で使う道具、ユニフォーム類にも費用がかかります。

また、受験費用も必要です。我が家の場合も、8年半のダブルケア期間は、ちょうど、高校受験と大学受験がある時期でした。一人は、中高一貫校だったのですが、そうでなければ、高校受験が3回、大学受験が2回あるタイミングでした。

塾代、すべり止めも含めた受験料や入学金、入学後の授業料も用意しておかねばなりません。

予定外の支出があっても、これらを準備できるようにしておくことは、介護が子どもたちの将来に影響しないために、必要なことだと思います。

 

要介護者も介護者も社会とのつながりを保つことができる

 介護をしていると、どうしても、時間の制約が出てきます。要介護者が、デイサービスやショートステイなどに出かけることを喜ばないと、介護者は、自分がいるからいいかと考えがちです。そして、家にこもりがちになります。

仕事を辞めて、家にいて、時間が自由に使えるような気がするのもつかのま、介護者にできるだけのことをしてあげたいと意気込んだはずなのに、要介護者の甘えや文句、認知症による理屈だけでは対応しきれない言動が多いと、逃げ場のない負担感を感じるのも早いでしょう。

そのとき、収入がないという状況が、それまでしっかりした立場を持って収入を得ていた人にとって、社会から切り離され、取り残されたかのように感じられても不思議ではありません。

仕事もたいへんですが、「働いて報酬を得る」という、社会とのダイレクトな繋がりをもっておくことは、自分というものを保つために有効な手段です。

いろいろと要求のある要介護者であっても、家族の生活、子どもの教育費のために、介護者が仕事をするということは、理解しやすいことだと思います。

義母も最初は、デイサービスどころか、ヘルパーさんに食事の用意を頼むことさえ、嫌がりました。しかし、学費のために働くということには何も言いませんでした。きちんと説明すれば、デイサービスやショートステイに行くことにも、やがて理解をしてくれることも多いと思います。孫のために、自分もがんばらないとと思うのかもしれません。

義祖母のときも抵抗がありましたが、「子どもも学校へ行ってがんばっているから、おばあちゃんも、身体のために、学校だと思って出かけてみませんか」と言うと、「そうだねー」と出かけるようになりました。

一歩外へ出れば、意外と楽しいということもあります。クイズに正解したり、得意の歌や習字を披露したり、昔の苦労話に感心してもらったりして、自分を認めてもらう機会が増えるのです。着ているセーターひとつ褒められるだけでも、うれしいものです。これは、普段からよく知っている家族はなかなかしてくれないことで、とても大事な体験です。

そして、他人と接し、世間話をしたり、気を遣ったり、おしゃれをしたり、いい格好をしたりして、人を意識して過ごす時間は、人の精神を健康に保ち、前向きに生きるためにとてもよいことです。人間は、社会的動物だと言われるのは本当だとつくづく思います。

外出することで、要介護者の、介護をしてくれる家族への気持ちが、穏やかになるきっかけになるかもしれません。そして、介護者もまた、社会の中に自分の居場所があると思えることで、人としての尊厳と理性を保って介護にあたれると思います。

家族だけでがんばったあげく、悲惨な事件になってしまったニュースなどを見るたびに、もっと社会の制度や資源を頼っていいということが周知されることを願います。

それぞれの年齢にあった社会との関わりを保つことが、長い介護をやりきるコツだと思います。

 

予想以上の出費に備えることができる

介護がどのように進んでいくのかは、ケースバイケースです。いろいろな条件や状況が重なって起こってくることに、その時々対応していくしかありません。

たとえば、デイリーの介護体制を月に15万円の介護、生活費用でまかなっていたとしましょう。しかし、骨折したり、体調を崩したりして入院になったとします。すると、高齢者の場合は、まず、個室になることが多いです。せん妄といって、一時的に気持ちが混乱することが多いからです。混乱がなければ多床室に入れるかもしれませんが、認知症がある場合は、ずっと個室になる可能性が高いです。

そうなると、治療費に加え、個室料が、1日1万円ほどかかります。仮に、入院期間が1ヶ月であれば、個室料だけで30万円ほどかかることになり、もともとの1ヶ月の介護サービス利用料と生活費15万円と比べて、2倍以上の支出が見込まれるわけです。不労所得などの収入や貯え、生命保険などが十分にあればよいですが、そうでない時には、介護者側が入院費用のサポートをしなければならないこともあります。

一方で、子どもたちの教育費もかさむ時期です。このとき、やはり、仕事があり収入があるということは、大黒柱であればもちろん、パートであっても心丈夫です。

大学生になれば、返済型の奨学金ならたいていは借りることができますから、 なんとかなりやすいのですが、高校までは、学費に部活動費、塾や予備校費用を自力で捻出しなければならないことがほとんどです。

そして、この時期は、子どもにとって一生を左右すると言っても過言ではない、とても大事な時期でもあります。お金を理由に希望の進路を変えさせるわけにはいかないと思いながら、私も在宅ワークですが、仕事を続けました。

 

遺産相続でもめにくい

介護をしている側は、そのたいへんさに、相続の際には考慮してほしいと思うこともあるかもしれません。実際、法律でも特別寄与というものが認められています。しかし、これは、明らかな金銭的な補助がある場合でなければなかなか認められません。

たとえば、生活費を毎月決まって渡していたとか、介護費用や医療費を、いつ、いくら支払ったといったことが明確である場合です。

また、介護をしない人には、介護のたいへんさは、なかなかわかりづらいことのようで、介護者が提供した労力や時間に対する評価は得にくいこともあります。

たとえば、仕事を辞めて介護をすることと引き替えに、親の年金や収入から、生活費を補填してもらっていたとしましょう。あるいは、それを機に、親の家で同居を始めたとします。仕事を辞めてまで介護をした人は、当然だと思うかもしれませんが、介護をしない人は、「生活費も家賃も助けてもらって」と逆に親から恩恵を受けたと考える場合もあるのです。

たとえ、そんな事実はないとしても、介護の労力を正当に評価してくれるかどうかはわかりません。介護をした人はもめる気はなくとも、親族はどう考えているのかもわかりません。

世知辛い話ですが、できるだけ、お金の流れをクリアにしておくことが、もめるもとを断つことになります。そのためにも、自分の家庭の家計は、自力で成り立つようにしておくことがよいと思います。そのうえで、親族がなんらかの考慮をしてくれたら、ありがたいことです。

たいへんな介護を乗り越えた先に、もめごとがあるのは辛い結末です。

「よくがんばったね」「よくやってくれたね」「ありがとう」そんな言葉で、介護をしたことをよい経験として、残したいものです。

 

そのためにも、仕事を辞めたくない方は、できだけ仕事を続けられる方法を模索してみることをおすすめします。

 

では、どんな方法があるのか、次の記事で考えてみたいと思います。

 

 

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