ダブルケアデイズ

子育ての最中に、介護がやってきた!ひた走る日々。

ダブルケアと介護のプロ

ダブルケアを行うとき、特に在宅介護の場合は、主たる介護者一人で何もかもを抱え込まないことが、被介護者はもちろんのこと、家族皆の生活を守るためにとても大切だと、8年半のダブルケア生活を振り返って実感します。

また、兄弟姉妹など、他の家族や親せきとうまく連携がとれていても、客観的な介護のプロの目をしっかり入れて、ケアマネージャーをはじめとして、介護ヘルパーさんやデイケアやデイサービスなどの各種介護施設と連携して介護プランを立てることで、介護は安定すると思います。

ときには、難しい判断を迫られたり、家族だけの感情にまかせたバランスを欠いた考えに陥ってしまったりすることもあります。そんな局面をできるだけ冷静に、よい方法で乗り切るためにも、家族以外の介護のプロとの良い関係を築いておくことは、大切です。

 

 

被介護者も介護者も家族も心身の状態は変化する

家族だけで、介護をうまく介護を分担できているなら、いくら介護のプロとはいえ、他人を家に入れることはないではないか、という考えもあるでしょう。そもそも、当のご本人が、他人の手による介護を好まない場合もあります。

しかし、被介護者も介護者もともに、心身の状況や生活の状況は刻々と変わっていきます。それにつれて、兄弟姉妹といえども、被介護者に対する感情も、介護に対する考えも変わってくる可能性があります。

家族間で、介護を担うバランスを均等にすることは、きわめて難しいと思います。

ましてや、ダブルケアの場合は、子どもたちの成長に伴う様々な変化が、月ごと、年ごとに起こってきますし、やはり、なにか突発的なことがないとはいえません。お子さんの介護がもともと必要で、親の介護も加わったという場合もしかりだと思います。

万が一、家族が介護できない状況になっても、介護は続くように体制を組んでおく必要があります。そのために、家族以外の人と被介護者とのコミュニケーションを普段からある程度積み上げておくことが大切だと思います。

できなくなったら、その時考えたらいいという考えもあるかもしれませんが、突然介護者が変わったら、介護を受ける人は、いつもの介護と違ってコミュニケーションがうまくとれず、途方にくれたり、いらいらしたりするかもしれません。

在宅ダブルケアにおいても、ホームなどに入っておられる場合でも、被介護者の家族と介護のプロとの関係を密に、そして、できるだけよいものに保っておくことが、安定した介護生活を支えるために、そして、できれば、いい経験として皆の心に残すために、とても大切だと思います。

 

家族にしかできないことに力を注ぐ

家族が被介護者を支えるということはどのようなことをすることなのでしょうか。

入院期間も短くなり、在宅療養、在宅介護を勧める社会状況にあれば、仕事をやめ、食事、着替え、その他生活に直接関わり手助けをするのが当然だと考える向きもあるでしょう。

しかし、家族にしかできないことと、介護ヘルパーやリハビリなどの専門家に託すことができることを、ある程度分けて考える必要もあると思います。

たとえば、

  • 基本的な生活費用(食費、水道光熱費、家賃など)はもちろん、病院や介護スタッフ、介護施設などへの支払いを行うこと。
  • 着やすい服や下着、気に入っているものを用意すること。
  • 今の気持ちをきいたり、思い出話をしたりすること。
  • 可能なら、外出をしたり外食をしたりして、気分転換をはかること。
  • 病院や往診の付き添いをして、医師やケアマネージャーと治療や介護の方針を考えること。
  • 健康保険証や年金手帳、介護保険証、特定疾患医療受給者証、障がい者手帳など、社会保障制度に関する書類を保管したり、継続するための手続きをすること。
  • 被介護者と知人友人との関係をつなぐこと。
  • ダブルケアの場合はとくに、子どもたちと被介護者との関係をこじらせないように工夫すること。(これは、とても大切で、また、気遣いの多いことです。)
  • 子どもの話をきいたり、学校や習い事などの必要なサポートを行うこと。

     

こういったことは、家族にしかできないこと です。そして、かなりの時間と心身のエネルギーを使います。だから、在宅介護の場合こそ、人の手を多く借りたほうがいいと思います。

 

直接介護に参加しない人の意見に翻弄されない

すべての方がそうだとは思いませんが、なぜか、たまにお見舞いに来る程度しか被介護者と関わらない人々のほうが、「もっとこうしてあげたほうがいい」「他人に任せるなんてかわいそうだ」「楽がしたいんでしょう。」などと言って、より良い介護について、日々を支える主たる介護者に物申すことが、あります。

主たる介護者にとっては、これは、とてもつらいことです。

ましてや、ダブルケアの場合、往々にして子どもにかけたい時間を介護に多く割いている場合がほとんどでしょう。

子どものほうも、今は我慢しなければと、自分を抑えていることも多いのです。我が家でも、習い事の応援や付き添いはほとんどできませんでしたし、買い物に一緒に行くとか、休日に出かける、旅行に行くとかいうことも、他のご家庭に比べればずいぶんと少ないことはわかっていました。

もちろん、介護はなくても、いろいろな家庭の状況や力を入れるものの違いによって、同じようなことはあるかもしれません。

しかし、日常的に、自分よりも家族の介護事情が優先されるという状況は、子どもにとっては辛いこともあります。

そのような心情が全く理解されないまま、今は、介護してあげないといけないのだから、子どもにも我慢させるのが当然だとか、子どもを優先するのはおかしいなどという言葉が、主たる介護者に向けられることは、非常に理不尽なことです。

このようなことが続くと、やはり、良好な関係を保つことは難しいです。直接介護に関わらず、要望だけを言う人は、つまるところ、「権利を主張し義務を果たさず」のタイプなのでしょう。権利を主張できる場面になると、自分がいかに被介護者のことを思っていたか、そして、主たる介護者がいかに被介護者に辛く接していたかと主張して、自分に大きな権利があると言い始めたりします。(悲しいことですが。)

主たる介護者は、だれが何と言おうと、介護を必要としている方の日常をいちばんそばで、支えているのです。それは、家にケアマネージャーや介護ヘルパー、リハビリのスタッフを入れることで客観的に認められることでもあります。

主たる介護者が、いかに、心身を使って介護を日々継続しているのかということを、よく分かってくれている第三者がいてくれることは、大きな心の支えになります。

だから、理不尽な言葉に翻弄されず、自分と自分の家族を守れるように行動するほうがいいのです。

保険を使い、介護のプロの手を借りることに、本来、遠慮も気兼ねも必要ありません。むしろ、介護も子どもたちの生活も安定しやすいと思います。

 

医療、介護のスタッフに任せられることは任せる

家族にしかできないことはなにかということをしっかりと把握し、それをこなして余力はどれくらいあるのかをわかっておくことが、ある程度の余裕と冷静さを保ちつつ、望ましい介護を継続していく鍵になると私は思います。

疲れた体と頭、心では、ときに判断を間違う可能性さえあります。

新聞やニュースで痛ましいできごとを目にすると、一人で抱え込まなければこんなに悲しい結果にならずに済んだだろうにと思います。

確かに、介護のプロとはいえ、人によってそのセンスはまちまちで、家族として全面的に任せられるかどうかは見極めなくてはならないでしょう。

でも、8年半、さまざまな介護ヘルパーさんやリハビリスタッフにお世話になってきましたが、皆さん、家族が被介護者を大切に思っているという気持ちは、ちゃんとわかって接してくださいました。

優秀なベテラン介護ヘルパーさんのいろいろな工夫には、介護の知識や技術がつまっていて、ずいぶんと勉強にもなりました。だから、決して一人で抱え込まず、積極的にプロの手を借りたほうがよいと思うのです。

被介護者の日常を守ることが大切であることはもちろんですが、介護者家族の心身をできるだけ健やかに守ることも同じくとても大切なことです。

介護の経験を、介護者にとっても、豊かな経験として残すためには、たいていの場合、介護のプロの手を借りることが力となるのではないかと思っています。

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