ダブルケアデイズ

子育ての最中に、介護がやってきた!ひた走る日々。

成年後見人として実際に行うこと

 

いろいろな手続きを終えて、無事に成年後見制度を使えるようになったら、実際には、どのような実務をこなしていくのかを書いていきます。

基本は、金銭の出納をきちんと記録するということです。

 

 

まずは成年後見人として要介護者の生活をサポートする意識をしっかりもつ

裁判所や法務省が出している成年後見制度の説明によると、法定後見人の場合、その立場は、後見、補佐、補助と被後見人(要介護者など)の判断能力によって分けられています。

つまり、要介護者の症状が重く、判断能力が低下するほど、成年後見人の療養看護義務や財産管理に関する代理権の範囲が広くなるということです。

また、特に法定後見人は、裁判所の審判によって選任された人が務めるので、途中で面倒だからといってやめるということは原則認められていません。任意後見の場合も公正証書で契約したからには、契約通り履行するのが原則です。成年後見人は、その身分が登記事項証明によって公的に示される立場です。そのため、後見が必要なくなるまで責務を全うするのが成年後見人の務めとされています。

 

成年後見人は財産管理や療養看護を自由に行えるのではない

成年後見人に与えられる代理権は、その立場が「後見」ともなると、財産管理に関するすべての法律行為について代理権が与えられるとなっています。これを読むと、よく理解していない人が、財産を自由に動かせ、使えると勘違いすることもあります。

しかし、これは、まったく違います。

あくまでも、被後見人(要介護者など)の生活を支援し、守るために財産の用い方を適正に判断する立場です。

 

成年後見人は、療養看護を直接しなければならないのか

成年後見人になると、療養看護を直接行わなければならないのかというと、そうではないと裁判所や法務省では説明しています。実際、施設に入所すれば、日々の生活は、施設のスタッフがみてくれますし、在宅介護にしても、極端なケースでは、全てを訪問介護ヘルパーや家事代行サービスに依頼してもいいわけです。ただ、それにまつわる契約や、支払いの手続きを代理で行うということです。

 

誰が成年後見人を務めるのがよいか

「成年後見人になれない人」は、裁判所によって決められています。主に、未成年であったり、自身が、社会的保護や支援を必要としている場合です。その他、一般的な社会生活が送れている人なら法的には受け入れられているようです。

介護に加えて事務手続きもとなると、気おくれしそうですが、現実的には、成年後見制度を十分生かすには、主たる介護者か、 その家族で引き受けるのがよいと思います。なぜなら、やはり、実際に日々の介護に携わっていない人には、必要な介護体制の選択や本人の好みや望みがわかりにくいからです。

ただ、法定後見の場合は、要介護者の財産の動きを見きわめた上で選任されるので、そうもいかないこともあるでしょう。特に、介護者が、要介護者の財産を使い込んでいることが判明した場合には、選任されることはないと思います。

 

任意後見制度の場合

我が家の場合、義祖母は、任意後見制度を利用しました。受任者は実孫である夫です。

義祖母の介護が始まることが明白になったとき、まだ認知症はなかった義祖母と、今後のことを話し合いました。それは、介護をしないという選択をした他の親族と、立場上、一線を画すためであり、私たちが介護をするにあたって、財産管理や療養看護についてのトラブルを避けるためでありました。

しかし、夫は、勤め人であり、日々の主たる介護者は私です。受任者は、さらに復代理人といって、受任者ができないことをする者を指名できますので、復代理人を私が務めることにしました。

ケアマネージャーとの話し合いや、介護プランの実行、介護に必要なものの購入、往診、訪問介護サービスやデイサービス、ショートステイ利用についての契約支払いは、主たる介護者兼復代理人である私が代行しました。

引き落としできるものは、すべて金融機関からの引き落としとし、手払い金は、ノートにつけ、領収書を保管します。それをもとに、受任者である夫が約3カ月ごとに支払いのまとめを行い、任意後見監督人に報告書を提出します。

仮に、親族のだれかが、主たる介護者家族がたいへんだからと成年後見人を務めたら、おそらくは、うまく、制度を生かすことはできなかったと思います。

なぜなら、日々の介護に携わっていない人には、やはり、必要な介護体制の組み方や、必要な介護用品はピンと来ないからです。主たる介護者が必要だと考えるものやサービスでも、任意後見人が、必要と認めなければ費用を出してもらうことはできません。もし、意見が合わなければあつれきが生まれてしまう可能性もあります。また、必要であることを説明する手間もかかります。

少しでも時間がほしい介護生活であり、ダブルケア生活です。ここは、やはり、実際に、介護を必要とする方のことに、日々心と時間を費やしている人が引き受けるほうが、すばやく適当な選択をしながら介護が行えると思います。

法定後見の場合でも、希望は出すことができますし、主たる介護者が、法的にも、客観的な実情からも適任だと判断されるなら、主たる介護者が成年後見人を務めることができると思います。

 

財産管理は、できるだけ金融機関の引き落としを利用して通帳で管理すると簡便になる

先ほども少しふれましたが、財産管理は、できるだけ金融機関の引き落としを利用すると、事務が簡便になります。

最近では、どこに振り込んだかということも通帳に記帳される金融機関もありますし、税金なら、国税の場合「コクゼイ」のように、税金の支払い先まで区別した内容で印字される金融機関もあります。

印字されないお金の出入りについては、通帳に書き込んでおくと、後の整理がしやすいです。

介護でたいへんなときには、裁判所や任意後見監督人への報告では、この通帳をコピーするだけで、大半の用がたります。あとは、手払いの記録を提出すればよいのです。

 

 手払い金は、すべて1円単位まで記録し、レシートや領収書をもらって保管する

要介護者の生活費のうち、手払いになるものは、面倒でも、1円単位まで記録しましょう。とにかく、明らかにしておくことが、トラブルを避けるにはいちばんです。

通院や往診費、薬代、オムツ、トロミ剤、保湿クリーム、絆創膏、歯ブラシ、オブラート……と、こまごました出費や買い物は結構あります。多くは、ドラックストアで買えますが、ここでは、子どものおやつや洗濯洗剤、トイレットペーパーなど、家族で使う日用品も買います。しかし、レシートを分けるのは、レジでの作業が煩雑で時間もかかってしまいます。

そこで、私は、全部一緒にレジを済ませ、義祖母のものだけレシートに印をつけ、ノートに書いて、レシートは、保存します。任意後見監督人に記録を提出するとき、レシートまでは出さなくてよいとは言われていますが、取っておくようにしています。

ここまでしておけば、誰に何を言われても、どのようなチェックが入っても大丈夫だからです。

 

成年後見制度は、介護者を守る制度でもある

個人的な見解としては、成年後見制度は、要介護者のみならず、介護者をも守る制度だと私は思っています。

介護者にとっては、とても、心外なことですが、親の財産を使い込んでいると思われてしまったり、お金のために介護をしているかのように親族から言われるという話は、よくききます。

知人は、お兄様家族が介護をするにあたって、兄弟全員で、親の財産は親のために使うという内容で、念書を書いたそうです。あたりまえのことなのですが、無用な憶測を避けるためにはそれも、一つの知恵と言えると思います。

成年後見制度を利用すれば、その身分は、登記事項証明によって明示され、財産管理や療養看護の利用状況について裁判所のチェックが入っていることが明らかとなります。

特に委任状を必要とするような公的手続きは、この、登記事項証明書によって委任状が必要ではなくなり、とてもスムーズになります。復代理人を定めるときには、受任者から復代理人を定める旨を書いたものを作ってもらいます。たとえば、我が家の場合、私が義祖母の公的手続きをする場合には、受任者である夫の名で発行された登記事項証明書と、夫が私を復代理人と定めた旨を書いた委任状をセットで示しました。

思わぬ憶測を避けることにもなり、要介護者の生活とともに、介護者の立場をも守ることにつながると思います。

 

 

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